国の権限を高める緊急事態宣言、いまさら改定がなぜ必要なのか

どうもScivanです。今日は来週3月13日に成立が見込まれている「緊急事態宣言」を可能にする法案について、見ていきたいと思います。

その法案の正式名称は、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」といって、既に2019年6月25日から施行されている法律です。

なのにまた来週法案とおす?のということですが、この点は最後に述べたいと思います。簡単に述べておくと、この法案の対象となる「新型インフルエンザ等」に今回の「新型コロナウイルス」が該当しないということで、それを該当するように読めるように改正するということです。

国の権限を高める新型インフルエンザ等対策特別措置法

それでは、この法律では何ができるようになるのでしょうか。具体的に見ていきたいと思います。まず目的です。対策の強化ができるようにこの法律があります。すなわち国民を保護するため国の権限を強めるということですね。なお、この権限を強められる期間(緊急事態宣言の期間)は最長2年間+1年延長となっています。また対象とする都道府県等の「区域」を指定することになっています。

新型インフルエンザ等に対する対策の強化を図り、もって新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることを目的とする。

新型インフルエンザ等対策特別措置法 第一条

緊急事態宣言の間(最長2年+1年)、国は様々な権限が行使可能に

具体的に、何を目的として国の権限として何ができるようになるのか、という視点で整理してみました。

目的1.まん延の防止(感染を防止するための協力要請等)

権限①:住民に対して外出禁止要請が可能になる(生活の維持に必要な場合を除く)

当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。

新型インフルエンザ等対策特別措置法 第四十五条

権限②:多数の者が利用する施設(学校、社会福祉施設、興行場含む)やイベント主催者に施設の閉鎖、イベント停止等の要請が可能になる

新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設、興行場、その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。

新型インフルエンザ等対策特別措置法 第四十五条 2

目的2.医療等の提供体制の確保

権限①:臨時の医療施設を開設するために国民の土地、家屋、物資を使用することが可能となる(国民の同意がなくても)

特定都道府県知事は、当該特定都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等緊急事態措置の実施に当たり、臨時の医療施設を開設するため、土地、家屋又は物資を使用する必要があると認めるときは、当土地等の所有者及び占有者の同意を得て、当該土地等を使用することができる。

前項の場合において土地等の所有者若しくは占有者が正当な理由がないのに同意をしないとき、又は土地等の所有者若しくは占有者の所在が不明であるため同項の同意を求めることができないときは、特定都道府県知事は、臨時の医療施設を開設するため特に必要があると認めるときに限り、同項の規定にかかわらず、同意を得ないで、当該土地等を使用することができる

新型インフルエンザ等対策特別措置法 第四十九条

権限②医師、看護師に患者への医療提供の要請が可能となる

都道府県知事は、新型インフルエンザ等の患者又は新型インフルエンザ等にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者に対する医療の提供を行うため必要があると認めるときは、医師、看護師その他の政令で定める医療関係者に対し、その場所及び期間その他の必要な事項を示して、当該患者等に対する医療を行うよう要請することができる。

新型インフルエンザ等対策特別措置法 第三十一条

どうでしょうか。目的1のまん延の防止については、国内でイベントを自粛するなど、国の要請を受ける以前に既に始まっていますね。国民の外出禁止の要請というのは今後そうなる日が日本でも本当に来るのでしょうか。

また、患者が増えた場合に備えて目的2の医療等の提供体制の確保があります。医療施設が不足する場合には、土地、家屋を最悪国民の同意なく使用するといったことも可能となります。これはかなり強力な権限ですね。

法律改正は厚生労働省の想定違いで必要になった?

最後に、なぜこの法律を改正しなければならなくなったのか、について。この法律の対象である新型インフルエンザ等は、現在の法律では以下の定義となっています。

新型インフルエンザ等 新型インフルエンザ等感染症及び新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)をいう。

新型インフルエンザ等対策特別措置法 第二条

すなわちこの法律を行使するためには、対象が「新型インフルエンザ等感染症」か「新感染症」であることが必要なのです。

「新型インフルエンザ等感染症」とは以下の定義となっています。今回の新型コロナウイルスは「インフルエンザ」ではないため、ここには該当しないということです。

新型インフルエンザ(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)

再興型インフルエンザ(かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 第六条 第七項

「新感染症」とは以下の定義となっています。今回の新型コロナウイルスは素人が読んでもまさしくこれに該当するのではないかと思います。なので、改正しなくてもよいのではと思うのですが。。

この法律において「新感染症」とは、人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、当該疾病にかかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 第六条 第九項

実は、新型コロナウイルスは、すでに「新感染症」の定義と相対にある「指定感染症」に厚生労働省が指定しているのです。本当は新型コロナウイルスは、「新感染症」なのにもかかわらず、先走ってか「指定感染症」というものに分類してしまったため、いまさら「新感染症」にできないということかと思います。

なお、「指定感染症」は以下の定義です。厚生労働省が、そもそも新型コロナウイルスを「既に知られている感染症の疾病である指定感染症」としてしまったことが、今回の改定をしなければならない原因になっているのではないでしょうか。

この法律において「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病であって、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 第六条 第八項

これが本当かどうかは3月10日に提出される法案を見てみないとわからないですが。気になる方は新しい法案を調べてみては如何でしょうか。

それではまた!